AIを導入しての業務効率化は日進月歩で進んでいます。それはAIの得意とする業務の正確性・ビックデータ解析にもとづく予測性・自身で学習を続けていくディープラーニングという特徴が必要とされているからに他なりません。今回はそんな進歩を続けるAI技術から「金融商品レコメンドシステム」をご紹介します。
金融商品レコメンドシステムとは?
「金融商品レコメンドシステム」で有名なシステムといえば、2019年8月群馬銀行をはじめとする地方銀行7行による銀行業務のデジタル化の研究開発を共同で行うフィンクロス・パートナシップによって開発・導入が開始されたAIを活用したシステムです。
生産性と顧客満足度の向上
匿名性を担保した上で、個々の銀行にある残高や入出金明細、顧客属性、交渉履歴などのデータを収集分析、顧客のライフスタイルを予測し、銀行が売り出している金融商品の購入可能性が高い顧客リストを抽出します。AIによって抽出された購入可能性が高い顧客にアプローチすることで、銀行側にとってより確度の高い提案や顧客満足度の向上につながり、顧客にとっても不要なリスク商品を提案されずに、かゆいところに手が届くような使い勝手の良い金融商品の提案だけを受けることになります。
共同プロジェクトの意義
AIではビックデータを分析することにより作成される独自のシステムによって、提案の精度が大きく変動します。また、独自のAIシステムを地方銀行単独で開発するには、莫大な費用と月日を必要とします。そのAIの弱点を地方銀行7行の共同で行うことで、データの正確性の向上、費用と工期の大幅な短縮を図っています。
その他の事例
~新生銀行~
新生銀行でも同様の取り組みを行っています。新生銀行が保有する300万人のうち、上位1割にあたる30万人分の個人情報・属性情報・取引情報・ネットバンキング利用情報のデータを集計し分析。分析情報からAIが購買予測と行動予測をたて、購入確率の高い顧客の抽出を行います。抽出された顧客の中から、一人ひとりの顧客が購入しそうな商品の好みをさらに抽出し、顧客別に提案内容の細分化をおこないます。営業担当は細分化された提案内容をもとに顧客へアプローチしていきます。その商談の中で顧客の嗜好やニーズが判明するとその情報をアップロードし、再度分析、提案内容の精度を高めていく。というシステムの構築を行いました。
~横浜銀行~
横浜銀行では非対面取引の強化として店舗での対面営業と同様に「結婚資金の貯蓄」や「マイホーム購入」を考えうる顧客一人ひとりのニーズ・ライフステージにあわせた金融商品をおすすめ出来る仕組みをホームページに導入しています。
①ルールベースレコメンド
事前に「新規ユーザー」にはこの金融商品、「このページを訪れたユーザー」にはこの金融商品をおすすめするというようにルールを決めておき、ホームページをおとずれたユーザーの行動にあわせておすすめする内容を変えていきます。
②自動レコメンド
ホームページに流入したユーザーのページ内行動・訪問回数・過去の閲覧履歴のようなデータを収集し、興味のあるコンテンツや金融商品を分析、一人ひとりに適した商品をホームページ内に展開出来るようにしました。
AIを使ったレコメンドシステム
前述のようにビックデータを収集分析し、ユーザー別におすすめ商品を表示するにはデータマイニングというAI技術を用いたレコメンドエンジンというものが使用されていることが多くあります。
レコメンドエンジンの使用用途は幅広く、先にご紹介した「金融商材の提案」から「オンラインショップのおすすめ商品」「メディアサイトで関連記事の紹介」などにも活用されています。
レコメンドエンジン導入の注意点
レコメンドエンジンはさまざまなところに利用されていることをご理解いただけたかと思います。自社サービスにも導入したいと思ってくれた方もいるかもしれませんが、レコメンドエンジン導入にも注意する点があります。
導入から活用までのタイムラグ
レコメンドエンジンを導入しても、レコメンドを表示するには一定のアクセスやコンバージョンといったデータ蓄積が必要だったり、利用者に最適なレコメンドが難しい場合があります。データ蓄積の目安として、訪問数1000程度必要と考えておきましょう。
利用目的の明確化
WEBサイトに多くの商品があり、頻繁にユーザーが訪問してくれるサイトで、レコメンドエンジンが効果を発揮します。その際のおすすめしたい商品数が確保出来るか。現状の課題がレコメンドエンジンを導入することで解決出来るのか。など、利用目的を設定せずに導入してしまうとせっかくのシステムも意味をなしません。
レコメンドエンジンの今後
AI技術は日々進化しています。今回ご紹介したAI技術は事前に「ルールの設定」や「ビッグデータ分析」が必要でしたが、リアルタイムで情報収集が行えるウェブサイトでは、事前準備が必要のなくおすすめページを表示出来るリアルタイムレコメンドの導入も進んでいます。このようなAIレコメンドを活用することで、売上の向上だけでなく、顧客満足度の上昇も期待出来ます。是非一度、導入を検討してみてはいかがでしょうか。